小さなネットショップでもできる、在庫処分を目的としたアウトレット販売と気をつけたい点をご案内したいと思います。
巷には様々なアウトレットショップやアウトレットモールがあります。
アウトレットと一言でいっても、お値段的にお得なファッショナブルなショップ、商品の質が多少落ちる安売りショップ、○○倉庫というようにキズモノから中古品まで何でもありというショップなどがあります。
お店が繁盛してくると抱える問題の一つに「在庫」があります。もっと具体的に言えば、売れ残った商品、返品された商品、キズモノ商品などです。
在庫を効率的に処分していかないと、商品を管理するスペースがそのうち一杯になってしまいますし、仕入れている以上その代金をいくらかでも取り返さないと徐々に損失が大きくなってしまいます。
在庫処分の方法は色々ありますが、闇雲にアウトレットセールなどをやっても、逆に本業を傷つけてしまうことがありますので注意が必要です。
アウトレットの「負」の部分を理解しましょう
アウトレットを始める前に、まずはアウトレットの負の部分を理解することが大切だと思います。
アウトレットセールはお客さんに人気がありますが、大きく値引きして売るため、お店としては余り利益は出ないでしょう。
安いアウトレット商品にお客さんが集中すると、忙しいだけで儲けは少なく、健全な商売になりませんので注意が必要です。
また、アウトレットが流行ると「通常販売している商品が売れなくなる」という大きなマイナス点があります。
自分がお客さんの立場として考えると商品が安く買えるというのはお得で嬉しいことでしょう。
お店としては、アウトレットで多少商品がさばけても、お客さんが通常価格で買うのがばかばかしくなってしまうと、日々の経営が厳しくなってしまいます。
特に、お客さんがアウトレットセールなどを待つようになってしまうケースでは、セールの時しかお客さんが来てくれなくなって、経営を圧迫してしまいます。
アウトレットでは、商品の負の部分をお客さんに告知してしまうことにもなります。
一般に、アウトレット商品はなぜ安くなっているのか?という理由を説明して安く売ります。
その中で、キズがつきやすい商品である、特定の部品は取れやすい、色落ちしてしまう、初期不良があるなど、商品の悪い面がお客さんに伝わってしまうことがあります。
それがごく一部の商品であっても、普通の商品がすべてが同じ問題を持っている可能性があると思われてしまうと通常商品が売れにくくなります。
これでは、せっかく在庫処分等でアウトレットセールをしても、通常販売の売上げを阻害しているだけです。いわゆる自分で自分の首を絞めているようなものです。
アウトレットセールでの失敗談
私の失敗談ですが、本店にアウトレットコーナーを設置したところ、通常の商品の売上げが激減してしまいました。
アウトレットセールをやると集客は10倍以上で、確かに売れました。でも、忙しいわりには利益は少なかったです。
結局、アウトレットをやっても無駄に損をするだけと悟って、やめてしまいました。
しかし、アウトレットのお得感をお客さんが体験してしまうとなかなか通常の商品を買ってくれなくて、アウトレットを止めた後は暫く売れない時期がありました。
お客さんとしては、アウトレットセールをまたやるだろうと待っていたのではないかと思います。実際、アウトレットセールの時期を聞いてくるお客さんが何人もいました。
実証しても仕方ないのですが、試してみたくて再度アウトレットセールをやったところ、メルマガで告知しただけで、あっという間にお客さんがもどってきました。
そのときは、アウトレットセール品の価格が少し高めに設定してあったこともあって、余り売れませんでした。一度美味しい体験をしてしまったお客さんは、それ以外には見向きをしてくれないと実感しました。
アウトレットセールは、ドーピングというと言い方は悪いかもしれませんが、一時的に売上げを上げるだけで、長期的にみるとお店にはマイナス要因になりかねません。
シーズンごとに年に2~3回程度やるのであれば問題ないかもしれませんが、売れないからといってアウトレットセールばかり乱発してしまったり常設してしまうと、利益が少ないのに忙しいだけという状態になってしまいます。
また、アウトレットセールばかりやるお店は、経営が厳しいと思われてしまうことがあり、長期的な信頼を失ってしまうことがあります。
本店とは別のお店で販売する
前出のアウトレットの負の部分を理解すれば、本店(メインのショップ)内にアウトレット・コーナーを作ったり、アウトレット・セールを行うには慎重さが必要ということが分かっていただけると思います。
そこで、在庫処分したい商品が増えてきた際には、本店以外で売る方法を考みてはどうでしょうか。
おすすめは、アウトレット専用に新たにネットショップを立ち上げたり、オークションやフリマで売る方法です。
自分で売るのは時間がないという際には、オークションに代行出品してくれる会社がいくつもありますので、手数料を払っておまかせすることもできます。
通常販売品とアウトレット商品を同じ流通市場で売らないことにも気をつけたいものです。
たとえば、複数の出店をしていて、楽天市場やYahoo!ショッピング内で通常商品とアウトレット商品を同時に売ってしまうと商品を検索した時に安い方にお客さんは集中してしまう傾向があります。これでは自分のお店同士で潰し合っているようなものです。
アパレルのように流行りのある商品は、人気のあるものは早々に売れてしまう傾向があり、シーズンの影響もあって売れ残りは時間が経つほど売れないので、シーズンの終わりには投げ売り状態になります。
商品の入れ替えが早い業界は、アウトレットセールなどをやって手早く商品を入れ替えするというのは仕方ないでしょう。
アパレル系の中には、通常販売店とは別に、都心から離れた地方にアウトレット店を別に出すというように、異なる場所で販売するところも増えています。
アウトレットショップの利点
アウトレットの利点は、売れない不人気商品だけではなく傷物でも売ることができる柔軟性です。
商品に多少難があっても、アウトレットならOKという「幅」が広く、今までは破棄していたような商品でも販売が可能です。
ただ、お店の格式やブランドを守る意味からも、商品が正常に機能するか不明とか、商品から部品だけを取って使えるなどジャンク品はお店で売るのはやめた方がよいと思います。
仕入れの時点で傷があることが分かれば、卸会社に返品することができると思いますが、取引先が海外であると余計コストがかかってしまいます。
お客さんに発送した後で、キズがあることがわかったり、返品の際に商品が傷んで返されることもあります。一旦開封されてしまうと、たとえ未使用であってもお店では売れなくなってしまう商品もあります。
こういった状況では、自分で使う、知人にあげる、または、破棄するという全くお金にならない選択しか残っていないことがあります。
キズモノ商品等を買取りしている専門会社などもありますが、大手の家具店や家電ショップなどを相手にしているケースで、大きな金額ではないと取引が難しいと思います。
そこで、自分のアウトレットショップがあれば、多少難のある商品を自分で販売することが可能になります。
こういった受け皿があると、返品などがあっても「これはアウトレットで売ればいい」という心の余裕が生まれます。
返品=破棄という選択肢しかない場合は、お客さんから返品依頼があっても受けたくない気持ちになってしまうかもしれません。実際、問題があっても多くのショップでは頑なに返品を受けずに、お客さんと揉め事になることが珍しくありません。
コストのかからない運営を心がける
アウトレット専用にお店を作る際には、余り手間やお金を掛けたくないものでしょう。
そこで、BASEのように簡単にお店が運営できるシステムが使いやすいと思います。開設&月額固定費が無料なので、売れるまで費用はかかりません。
私個人のスタンスとしては、売れなくてもいい・・・くらいの気持ちでやっています。全く売れないのは困りますが、前出の通り売れ過ぎで通常販売に悪影響が出るのは困ります。
傷物や年数が経った在庫は、損失としてすでに考えているので、それほど無理して売ろうとはしません。売る余力があるなら、それは通常販売の方に力を入れたいです。
「欲しい方は、ぜひお願いします」という売り方に近いかもしれません。
商品にもよるので一概には言えませんが、商品自体しっかりしたものであれば、値段が安いので意外に売れるという気がしています。
当然ですが、賞味期限があるようなもの、流行りもの、経年で傷みが出るような商品(紙・布製品等)は早めに売った方がいいでしょう。
間違った集客手段のアウトレットセール
大手ショッピングモールでは価格競争が激しくて、年中アウトレットセールをやっているようなお店が結構あります。
本当はアウトレット商品ではないのに、ちょっと箱が傷んでいるとか理由をつけてアウトレット商品にしてしまって、単なる安売りを行っているお店もあります。
メーカー品などは最低販売価格が設定されていたり、割引できる幅が決まっていることが多く、勝手に安売りができません。そこで、箱が傷んでいる等の理由をつけて値引きしているケースがあります。
お客さんのレビューを見るとよく分かりますが、「キズモノとありましたがどこに傷があるのかわからないほど良品でした」とか、「アウトレットでしたがどこが問題なのかわからないほどでラッキーでした」といったようなコメントが投稿されていることが多々あります。
お客さんとしては、さぞかしお得な買い物をしたような気分になっていることでしょう。
しかしながら、元々、通常販売できるもので、アウトレットで出す商品ではないわけですから状態が良いのは当然なのです。
要は、アウトレット商品やアウトレットセールという魔法?を使わないと売れない状況に陥っているわけです。
こういった販売方法は、大量に安く仕入れて売っていかないと収益性は低く、中小のお店が苦し紛れにやっても結局は撤退していくことになると思います。
アウトレットは無理にやる必要は無い
散々、アウトレットの話をしていて、ここで「やる必要は無い」というのは矛盾がありますが、一番大事なのは、通常の商品を売ることなので、負担が重いようならアウトレットは無理してまでやる必要はないということです。
お店の利益だけを追求したとき、無理にアウトレットをやるより、通常販売の方に力を入れた方が健全な運営ができるでしょう。
もちろん、処分品の損失はありますが、それを勘案しても通常販売に力を入れた方が利益が残るはずです。
私のお店で扱っている商品の中には、多少傷があったり古くなっても商品自体は優れており愛着もあるため、簡単に破棄するのはもったいないという思いがあります。
もし、自分で苦労して制作したものであれば、なおさら捨てるのは厳しい選択になるのではないでしょうか。
当初、私は身内や知り合いにアウトレットになるような商品をプレゼントしていました。懸賞企画にしてお客さんにプレゼントする方法をとったこともあります。
しかし、販売する商品が多くなると在庫に残ってしまう品もそれなり増えて、人にプレゼントしているだけでは間に合いません。そこで、アウトレットショップを始めることにしました。
アウトレットショップに関しては、どこまでこだわったウェブサイトを作るかは個人の自由ですが、一度形ができたら後は商品を追加するだけで運営できるというように、シンプルなオペレーションをおすすめします。
繰り返しになりますが、アウトレット販売に軸足を置いて商売をしてしまうと、儲けがないのに忙しいということになる可能性が高いので気持ちの入れ過ぎは禁物です。
一番大切なのは、通常商品の販売であって、アウトレットは余裕があればやる程度で考えるくらいで良いのではないかと思います。
アウトレットで欲を出すと失敗する
アウトレットは通常販売より数的には売れるので、繁盛していると勘違いして、欲を出したくなることがあるのですが、ここで不用意な欲を出すと失敗する可能性が高いと思います。
アウトレットなのに値段が高い、高く売りたいがためにキズや故障を隠してしまう、こういったことをしてしまうとお店の信頼を一挙に落とします。
新年に売れない商品ばかりを福袋に詰めて売るショップもありますが、お客さんが福袋開けたときの残念な気持ちを考えてみてください。
まともなお店であれば、わざわざ評判を落とすために福袋を売る必要があるのかという疑問が生じるはずです。
扱う商品にもよりますし、捨て値のように安すぎるのも問題がありますが、損が出ない程度に考えて欲張り過ぎない販売にした方がよいと思います。
何でも安売りすればいいかというとそうでもなく、商品によっては年数が経つとプレミア感が増すものがあります。限定品やアンティック系の商品などがこれに該当するでしょう。
ネットショップの仕入れは身近にあるで少し書きましたが、もうマーケットにはない珍しい商品が在庫にあって、実は高額で売れるなんていうラッキーなこともあります。こういった商品のマーケット価値は専門的なことになるので、お店ごとの判断になるでしょう。
アウトレットがクレーマーの集まりに?
アウトレットに限らず安売り店に集まるお客さんの中には、絶対得をしたい!損をしたくない!というお店からしてみると少し怖い意思を持ったお客さんが結構います。
アウトレットと分かっていながら、過剰な期待を持つお客さんは非常にやっかいです。
理由をつけて、普通の商品をアウトレットとして売っているお店が多いのも原因ですが、「アウトレット=問題のある商品」という認識が少ないお客さんもいます。
在庫処分だと思って軽い気持ちで始めたアウトレットが、クレームばかりで、儲けはないし精神的な苦痛は増えるというようになったら最悪です。
こういったことがないように、どういった問題で安くなっているのか、商品説明は正直にわかりやすく記載した方がよいでしょう。
通常販売では多少大げさに商品の良さを説明しますが、アウトレットでそれをやってしまうとクレームに繋がる可能性があります。
安く売るから手抜きで良いということではありませんし、アウトレット販売ならではの難しさもあります。あくまでもオプションの一つとして、無理をしない範囲で検討されてみてはいかかがでしょうか。
★参考リンク:
アマゾン・アウトレット:アマゾン内にあるアウトレットコーナー。キズモノや賞味期限の近い商品などが割安で販売されています。商品状態の簡潔な説明などが参考になるかも。
古物営業法について:お店で仕入れた新品の在庫処分やアウトレット販売であれば通常は問題ありませんが、中古品や古物に該当する場合は許可が必要となります。※古物とは一度使用された物品、若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの、またはこれらの物品に幾分の手入れをしたもの。