2024年1月16日から、BASEのグロースプランの月払い・年払いの料金が大幅値上げされることになりました(通知が来たのは2023年11月7日)。
BASEには、スタンダードプラン(月額費用0円プラン)とグロースプラン(月額5,980円プラン)の2つがありますが、グロースプランの方が値上げされることになりました。
最近は様々なものが値上げされ慣れてしまった感がありますが、BASEのグロースプランは、いきなり3.3倍ほど値上されるとのことで驚きました。
BASEグロースプラン利用料の値上げ |
月払い:5,980円 → <新料金>19,980円 |
年払い:59,760円 → <新料金>198,960円 |
※料金は税込 |
実質的な手数料などを計算すると理解できなくもないですが、かなり財政的に困っているのかな、大株主から厳しい要求があるのかな、というが第一印象でした。
※BASEはネットショップを運営するためのプラットフォームを提供する会社です。詳しくはBASE紹介のページをご参照ください。
会社の財務状況を改善するためには仕方がない?
BASEはとても人気があり利用しているショップさんも多いのですが、BASE自体は赤字経営が続いています。
上場した当初の株価は、期待感から爆上げしましたが、今は低迷しています。株主からしてみれば早期の業績改善が求められているところでしょうし、どこかに買収されるのではといった株主間のうわさ話もちらほら聞きます。
BASEでネットショップを始めて、売上を伸ばしているショップが増えている中で、グロースプラン(月額5,980円)の料金体制では、BASEとしては収益性が低いのでしょうか。
であれば、既存の利用料金を急に3倍も値上げするよりも、もうひとつ上位プランを設定すれば、利用者が選択肢を持ててよかったと思ったりもしました。
しかし、現状2つのプラン(スタンダードとグロースプラン)から3つのプランに切り替えるには、差別化が難しかったりプラン内容が複雑になったりして、運営上の問題があったのかもしれません。
疑って見れば、月額約6000円を払っているお店から、2ヶ月程度の告知で約20,000円を払わせる方針(年払いは約6万円から20万円)に変えるのは、赤字経営を脱却するために半強制的に現金収入を増やすという安易な思惑も感じてしまいます。
人員や設備といったリソースが限られる中で、BASEとしては売上の高いお店に注力していこうという意思表示であるのかもしれません。
また、グロースプランで固定利用料を払っているお店でも、BASEからみたらコスパの悪いお店には、もっと利用料を払ってもらいたいし、それが嫌なら利用をやめてもらっても構わない、という損切りの選択をしているようにも感じます。
この辺りは想像の域を出ませんが、実際のところ、一定の売上のあるショップさんにとっては、BASEが利用料を値上げをしても困らないところも多いと思います。
1ヶ月に60万円の売上があるショップの例
一例として、1ヶ月に60万円の売上があるショップで、スタンダードプランとグロースプランの月額利用料を比べてみます。
まず、スタンダードプランには月額利用料がない代わりにサービス手数料があり、各注文に対して3%が請求されます。
グロースプランにはこのサービス手数料はなく、月額固定の利用料があります。注文したお客さんがクレジットカードやコンビニで支払われる際の決済手数料は、別に発生します。
1ヶ月60万円の売上があるショップの利用料金 |
・スタンダードプラン:サービス手数料:18,000円 (60万円x3%=18,000円) |
・グロースプラン:月額19,980円 (年払いは198,960円で、1ヶ月換算では16,580円になる) |
上記のように比べたとき、1ヶ月60万円の売上があれば、グロースプランの月額料金は決して高いものではないことが分かります。
1ヶ月の売上が100万円あるようなショップであれば、スタンダードプランのサービス手数料が30,000円になりますので、値上げされたグロースプラン(月額19,980円)であっても、グロースプランの方がお得になる計算です。
他社のサービスと比べたとき、もっと高い料金の会社もありますので、提供されるサービス等を細かく比較しないと高い安いというのは一概には言えません。しかし、BASEはお手頃料金で使えるイメージが強かったので、急に高くなったという評価も仕方ないかもしれません。
数字的には理解できても、今までは月額6000円程度であったものを、いきなり3倍もの値上げを強行されてしまって、利用者の間では「またお店にどんな不利な条件を出してくるか分からないし、近いうちにもっと値上げがあるかもしれない」という不信感が生まれていることは否めません。
ネットショップのオーナーとしては、今後のリスク回避のために、BASE以外のプラットフォームへの移行準備を始めるところがあっても不思議ではないでしょう。
BASE以外のネットショップ運営システムを選ぶ
BASEで販売が好調であれば、そのままBASEの方針に従って、値上げがあっても素直に応じるショップさんも多いでしょう。
でも、不信感や危機感から、BASE以外のシステムやプラットフォームを求めるショップさんもいるかもしれません。
そうなった場合の受け皿としては、現状、STORES が有力候補のひとつになるかと思います。STORESが、BASEに追従して値上げをしないことが前提ですが。
月額固定費が無料で簡単にネットショップが運営できるところでは、BASEとSTORESは2強と言えると思います。
そのため、初めてネットショップを始めよう思ったときに、BASEまたはSTORESのどちらかを選ぶショップさんが多いと思います。
また、BASEを選んだとしても、後にSTORESに乗り換えるショップさんがありますし、その逆もあります。
STORESは、フリープランとスタンダードという2つのプランがあります。
フリープラン | スタンダードプラン |
月額利用料:0円 | 月額利用料:3,240円 (半年払い:19,440円、年払い:35,760円) |
決済手数料:5% | 決済手数料:3.6%~ |
STORESの利用料金とサービス内容は公式サイトで確認してください。
STORESのフリープランは、月額利用料が無料で決済手数料5%という、分かりやすい料金体系です。
スタンダードプランは、月額利用料が発生しますが、その分、決済手数料が3.6%と低くなります(Amazon Payのみ3.9%)。月額利用料は3240円で、半年払いまたは年払いにすれば少し割引が適用されます。
フリープランの方が決済手数料が高く、スタンダードプランとの差が1.4%(5%-3.6%)になります。
この差額部分がBASEでいうところのサービス手数料と考えると、月額23万円の売上であれば、サービス手数料が3,220円になり、スタンダードプランの月額料金(3,240円)と同じくらいになります。
こういった計算から、1ヶ月の売上が20万円以上になってきたら、そろそろスタンダードプランに移行しようと計画ができるでしょうし、スタンダードプランに移行した後でも負担が急激に増えるものではありません。
BASEでは、月額利用料が「0円または19,980円」という極端な2択しかない状況と比べると、STORESが良心的な価格設定に思えてきます。※STORESでも、料金やサービス内容を色々変更していますので、あくまでも現時点での比較になります。
以下では、BASEグロースプランとSTORESスタンダードプランで、手数料の違いを簡易的な計算で比べてみます。
1ヶ月の売上が50万円で、BASEとSTORESの手数料を比較 |
BASE:19,980円(月額利用料)+ 14,500円(決済手数料2.9%)=34,480円 |
STORES:3,240円(月額利用料)+ 18,000円(決済手数料3.6%)=21,240円 |
※利用料金は、年払いの割引料金ではなく、月払い料金で計算しています。 |
単純計算で、34,480円(BASE) – 21,240円(STORES) = 13,240円になり、STORESの方が安いです。年間では158,880円の差になります。
BASEのグロースプランでは、月払いに比べて年払いの方が4万円ほど安くなります(月払い19,980円x12ヶ月=239,760円、年払いは198,960円)。そこで、利用料を年払いにしたケースでも比較してみます。
年間の売上が600万円で、BASEとSTORESの手数料を比較 |
BASE:198,960円(年額利用料)+ 174,000円(決済手数料2.9%)=372,960円 |
STORES:35,760円(年額利用料)+ 216,000円(決済手数料3.6%)=251,760円 |
年払いにしても、STORESの方が12万円以上安いですね。
次に、月100万円の売上のあるお店のケース(年間売上1200万円)で計算してみます。
年間の売上が1200万円で、BASEとSTORESの手数料を比較 |
BASE:198,960円(年額利用料)+ 348,000円(決済手数料2.9%)=546,960円 |
STORES:35,760円(年額利用料)+ 432,000円(決済手数料3.6%)=467,760円 |
BASEグロースプランの決済手数料は2.9%~という業界最低水準でお得な印象ですが、全体の手数料で見るとそうでもない感じです。
結局のところ、BASEの年額利用料が足かせになって、年間売上が2300万円くらいになってこないと、BASEとSTORESの手数料の差は縮まらないです。
ちなみに、年間売上が1200万円のとき、BASEの旧料金体系での手数料計算はこちら↓
旧料金:59,760円(年額利用料)+ 348,000円(決済手数料2.9%)=407,760円
BASEの旧料金体系であれば、手数料はBASEの方が安くなります。
このように他社と比較してみると、中小のショップさんにとっては、BASEグロースプランの値上げというのはそれなりのダメージがあるように思います。
※両社のサービスで細かいルールや規定がありますので、こちらで簡易的に計算した料金等と必ずしも一致しない場合があります。また、提供される両社のサービス内容については全く同じものではありませんが、ネットショップを運営するための基本機能が揃っていることを前提に、利用料金面だけの比較を掲載していますのでご了承ください。
両社にはそれぞれ得意分野があり、すぐれた機能やサービスなども豊富です。詳細は、BASEとSTORESの公式ページにてご確認ください。
フリマやショッピングモールへの出店を考える
BASE以外の売り場の選択肢として、フリマ(メルカリ、ヤフオク、ラクマなど)や大手ショッピングモール(楽天市場、ヤフーショッピング)なども検討するショップさんもいると思います。
メリカリを一例に上げると、メルカリは圧倒的な知名度がある個人売買サイトで、メルカリショップではお店として出品できます。
フリマということでネットショップとは少し趣が異なりますが、利用者がとても多いので、売上に対して10%の手数料がかかっても(月額の固定利用料はない)、出店の価値はあると思うショップさんがたくさんいます。
BASEのスタンダードプランでは、売上に対して約7%の手数料(決済手数料+サービス利用料)がかかってきます。メルカリと比べたとき、大きなマーケットに出品できてたくさんのお客さんにリーチできるのなら、メルカリの手数料は許容できるというショップオーナーさんもいるでしょう。
集客の面で言えば、メルカリはCMをたくさん出したり、アプリをスマホに入れている人も圧倒的に多く、プロモーションも含めて売るための販売戦略が豊富で、売れる確率が高いマーケットです。
メルカリは誰でも売れるというコンセプトで、素人さんが売っても普通に売れています。
BASEは集客を余りやってくれませんので、ショップさんは自分でSNSで発信したりして集客をしないとなかなか売れない面があります。取扱商品にもよりますが、こういった点からも、手数料が少し高くなってもメルカリに出店する価値はあるのではないでしょうか。
また、私のお店では、高額商品はメリカリの方が安心して売れる傾向があります。近年は、高額商品に対して盗んだクレジットカード情報を使った不正注文が増えていて、個別のショップで対応するのは厳しいと感じ始めています。
フリマ以外で、ネットショップとして売りやすい売り場といえば、王道のショッピングモールがあります。
すでに1ヶ月の売上が200~300万円に達しているショップは、さらなる売上を求めて、楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonなどのショッピングモールなどで販売を始めているでしょう。
BASEで売上が100万円以上で安定してきたら、大手ショッピングモールへの出店を検討してもよいのではないかと思います。
複数の売り場で運営しているショップさんでは、BASEが手数料を値上げをしても大して困らないでしょうし、必要であればいつでもBASEからは撤退できる用意があるでしょう。
スタンダードプランは今のところ変更なし
BASEには月額料金が無料のスタンダードプランがありますが、今のところ値上げといった変更はありません。
2023年時点で、200万店以上がBASEを使ってネットショップをオープンしているそうですが、これだけの数を集めるには「無料でネットショップが始められる」ということが大きな要因になっていると思います。
さすがに無料プランを有料にしたら、反発が大きくなるのは明らかでしょう。ただ、グロースプランの大幅な値上げを断行するあたりから想像すると、全くありえない話ではないかもしれません。
200万店以上が利用(登録)しているとはいえ、活動していない、または売上がないショップも数多く、余計なリソースを使っていると思います。経費を減らすには、こういった無駄を省いていく必要があると思います。
そんな中で、売上のないお店は退去してもらう目的も含めて、売上0円のお店から月額500円という利用料を取ったらどうなるでしょう。こういったショップが全体の半数あるとしたら、それだけで毎月5億円の収入になります(500円x100万店=5億円)。勝手な想像で、さすがにこれは無いと思いますけど^^;
ちなみに、カラーミーショップには休眠プランというものがあり、お店を長期間お休みする際には、月額辺り100円でお店を維持できます(契約は3・6・12ヶ月ごと)。休眠中は営業できませんが、顧客情報などのデータは維持されます。
BASEのスタンダードプランは月額固定費は無料ですが、注文ごとに決済手数料に加えて、システム利用料(サービス手数料3%)も徴収されるので、継続して販売しているお店にとっては、月額利用料を払っているのと同様です。
月額費用0円というのは、全く売れていない状態で、売れればサービス手数料という名の月額費用が発生します。
たとえば、1ヶ月に10万円売るお店では3000円、30万円売るお店では9000円が月額費用になります。
1ヶ月に100万円売上があれば、3万円も月額費用またはサービス料を払うことになります。
BASEの月額費用0円という案内につられてネットショップを始めたお店が多いと思いますが、売れ始めると利用料は安くないです。
月額費用で3万円も支払うのであれば、前出のSTORESをはじめ、カラーミーショップ 、メイクショップ 、らくうるカートなど色々な選択肢が浮かんできます。
BASEのサービス手数料は、注文ごとに引かれるので、固定費として見えにくい部分があるかもしれません。ところが、売上が上がってくると、他社と比べても決して安くない月額費用が生じています。
今後、このサービス手数料が値上げされたり、BASEアプリ経由の売上に手数料がかかったりして、現状の3%からプラス2~3%上げる程度であれば、しれっと変更されるかもしれません。
スタンダードプランで、サービス手数料が値上げされたら、かなりコスト高になって、月額費用0円や簡単に始められるネットショップのプラットフォームとしては評価が下がると思います。
しかし、BASEが赤字状態からの脱却、そして、将来的な生き残りをかけて、月額費用や手数料をどんどん上げてくるのであれば、小さいお店は徐々に梯子を外される状態になってくるかもしれません。
逆に、BASEが「小さいネットショップを守ってくれる」という前提であれば、今回のように儲かっているショップや会社の利用料を上げることで運営費を確保して、小さいお店は今まで通り運営できるようにしてくれる、ということになるのかもしれません。
大きな力には逆らえないこともある
一昔前は、ネットショップとシステムを提供してくれる会社が、一緒に成長してきた時代がありました。
そんな中で、システムを提供する会社にとって利用料の値上げは苦渋の選択で、それが伝わるから利用するネットショップ側も理解をして先に進んできました。
今は世界情勢や円安傾向で様々なものが値上がりしており、厳しい状況であることは理解しますが、「急で悪いけど、料金3倍に上げるからよろしく!」なんてことはネット関連では余り記憶にないです。ゆるく徐々値上がっていって、気がついたら数年後に3倍や5倍というのはありますけど(笑)
大きな資本が入って、株主がいて、会社が大手に買収されたりして、表舞台は艶やかでも、裏方ではマネーゲームの冷たい世界を感じることがあります。ちなみに、BASEの大株主には、外資系金融機関が数社入っています(2023年現在)。
システムやサービスを利用している立場のショップとしては、理不尽とも思えるような改悪が結構あります。
たとえば、楽天市場では改悪ばっかりと感じているショップさんも多いでしょう。しかし、売上が一定以上あれば撤退はできませんし、文句を言っても弾かれてしまうことがほとんどだと思います。
BASEの値上げに対しても、SNSで悲鳴や嘆きがありますし、批判する声も一部あります。でも、結局のところ、小さなネットショップでは抗うことは難しいですし、与えられた条件の中で頑張るしかありません。
BASEは、元々、0円でネットショップが始められて、運営コストも安いというのが売りでした。サービス手数料やグロースプランというのは後から出てきたもので、今回の値上げも含めて、投資分の回収とマネタイズの動きが加速してきているのかもしれません。
こういった不確かな状況で、自分がネットショップとして弱い立場にいることを実感したとき、一つのサービスに頼り切らないというのは、自分のお店を守る大事な策と言えるでしょう。
まずは一つのお店をしっかり守りながら、値上げの中でどう生き残るのか、また、いざというときに備えて、代替プランの準備を検討することが必要かもしれません。
なお、BASEのグロースプラン(年払い)に変更する場合、2023年12月15日以前の変更であれば、旧料金でグロースプランを1年間利用できるとのことです。