2018年7月の西日本各地で発生した未曾有の豪雨により、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。被災地が一日も早く復興され、被災地域の皆様が安全に生活できるようになることを心よりお祈りいたします。
ご家族の心配、インフラの復旧、自宅の修理や再建、瓦礫の撤去や掃除など問題が山積している中で、これからの生活のこと、そして、仕事の心配をされている方々も多いでしょう。こちらのページでは、震災時のネットショップ運営とその後について考えてみたいと思います。
西日本を中心とする豪雨災害は13日、大雨特別警報が最初に出た6日から1週間を迎えた。広島県と愛媛県では、なお2千人が孤立状態とみられている。死者が200人を超える中、行方不明者の捜索が続く。~2018年7月13日 朝日新聞デジタルより~
こんな状況で注文は受けられない!
震災の被害によって、お店を営業するのが難しいことがあるでしょう。
一旦、お店を休業してしまうと風評被害も含めて、お客さんが遠ざかってしまうことがあるため、無理にでも営業するお店があります。
営業するのか、休業するのかは、ショップオーナーさんの判断によりますが、慎重に判断して欲しいと思います。
無理に営業して、発送が遅れる、納品ミスが生じるなどお客さんに迷惑をかけてしまっては、更に状況を悪くしてしまいます。
郵便局や宅配会社の流通網が寸断されていれば、せっかく商品を発送しても、お客さんの元へなかなか届かないことがあります。お店だけが頑張ったとしても、結局はお客さんに迷惑をかけてしまう可能性があります。
お客さんによっては、注文時にお店の住所まで把握していないことがあり、お店側が被災しているを知らないことがあります。そんなときは、商品が送られてこない!といったクレームにつながってしまうことがあります。
すでに注文を受けてしまっている際には、できるだけ早急にお客さんに連絡をして、商品の発送が遅れること、または、商品の発送が難しいこと(注文をキャンセルさせていただきたいこと)を伝えてください。
震災に遭われたときは、お店を休業しても仕方ないですし、ほとんどのお客さんは理解してくれると思います。
従業員やスタッフのケア
お店の運営も大事ですが、従業員やスタッフの体調も考慮してください。
従業員も被災しているのであれば、ショップ運営よりも優先すべきことがきっとあるでしょう。
個人でショップ運営しているのであれば、家族と仕事の両方の負担で、ショップオーナー自身が体調を崩してしまうことがあるかもしれません。
自宅が被害にあっている、家族の心配や健康状態も含めて、働ける精神状態にない従業員には、十分休養を取れるように対応して欲しいと思います。
働ける状態であっても、勤務時間を減らすなど、従業員の負担を軽減することも考える必要があるでしょう。
従業員がお店に出られないことで、お店の運営に支障が出るようであれば、メール対応や商品発送が遅れることをお客さんに告知して、いつもどおりの運営はできないことを伝えてください。
こんな時だからこそ、いつもどおりお店を運営しようと思うショップオーナーさんがいるかもしれません。しかし、ショップオーナーさんをはじめ、従業員の方が体調を崩して倒れてしまうようなことがあれば、長い目で見て損失が大きくなる可能性があります。
働いてくれる従業員あってのお店であることを忘れてはいけないと思います。こんな時だからこそ、身近で働いてくれる人たちに感謝して、心配りをしてあげて欲しいと思います。
ショップ再開の計画を立てる
休業する際には、ショップページの一番目につくところに、状況を説明して、お店をお休みさせていただくことを記載してください。夏休みや連休の時期であれば、それを利用して少し長めのお休みにしてはどうでしょう。
できれば、期限を決めてお休みさせていただくのがよいと思います。「7月10日~7月25日まで休業させていただきます」というように期限がわかっていれば、お客さんが戻ってきやすくなります。
「暫くの間お休みします」や「営業再開はいつになるか分かりません」といった期限が決められていないときは、お客さんが次回の来店を諦めてしまう可能性があります。もちろん、被害が大きく、予定が全く立たないのであれば仕方ありませんので、無理はしないでください。
休業中でも、ブログやFacebookなどで週に1回でも近況を伝えられれば、お客さんも安心してくれますし、応援してくれることもあるでしょう。
少なくとも、お店を辞めていないこと、再開に向けて進んでいることをお客さんに伝えて欲しいと思います。
営業しているの?
被害を受けた同じ市内でも、東部や西部というように地域によってその被害の有無は異なります。
自分のお店に被害がないときには、お店には被害がなかったことをショップページでお客さんに伝えてください。ブログやFacebookなども更新してください。
当然ですが、被害にあっている方がいる状況では、自分たちだけが助かってよかったといった表現は避けて、被害者の方に寄り添う気持ちも必要だと思います。
何も告知がないときは、お客さんとしては、営業しているの?休業なの?と注文していいのか迷ってしまいます。
ホームページやブログなどが更新されていなければ、震災でお店が運営できていない状況ではないか?と思ってしまう人もいるでしょう。
他県や遠方のお客さんにとっては、お店のある地域で、どこが被害にあっていて、どこが被害がないのかといった詳しいことは分からないでしょう。そのため、お店の現状と営業の有無などを伝えて欲しいと思います。
停電で営業できなくなるネットショップ
ネットショップは、パソコン類が使えないと商売になりません。そのため、電源の確保は必須です。
大きな震災ではなくても、ちょっとした停電があれば、お店のパソコンでホームページを更新したり、メールや受注管理することができなくなります。
ノートパソコンであれば、内臓バッテリーで数時間(機種による)は稼働できると思いますが、ネットショップ運営ではデスクトップパソコンを利用しているショップさんも多いでしょう。スマホからもショップページが更新できるシステムが多いので、そういった手段も活用してください。
お店側が震災に遭っていることを知らないお客さんからは、次々と注文が入ってくるかもしれません。時間が経つほど混乱が大きくなる可能性があります。
電力が少しの間だけ戻ったり、ネット回線が使える状態であれば、少ないチャンスを見逃さず、お客さんへメールを送ったり、ショップページの情報を更新してください。
カーインバーターがあれば、車からノートパソコンやスマホに電力を供給できます。車が無事であることが前提ですが、シガーソケットに繋ぐことで小さな家電が使えるようになりますので、車内を小さなオフィスにすることが可能です。
家や事務所が浸水したり、避難に精一杯で、自分のスマホすら手元に無いようなこともあるかもしれません。その際には、お店で利用しているネットショップ運営システム(ショッピングカートを提供している)会社に、被災して営業できないことを電話等で連絡して、代理でショップページに休業案内を出してもらうなど、今後の対応について相談してください。
心配してくれるお客さんがいることに感謝
地震や台風など日本各地で様々な災害が発生します。私の住んでいる地域でも、数年に一度は、台風や地震でお店を休業したり、お客さんへの対応が遅れることがあります。
そんなピンチのときに、たくさんのお客さんから、「大丈夫ですか?」とメールが届きます。本当にありがたいことです(涙)
そして、多くのお客さんがメールの最後に、「お返事は気にしないでください(不要です)」と付け加えてくれます。大変なときに、メールの返信に追われないように気遣ってくれます。
注文してくださるお客さんもいますが、「急いでいないので、発送は落ち着いてからでいいですよ」と言ってくださることもあります。お言葉に甘えること無くできる限りのことはしますが、お気持ちだけで嬉しくなります。
こういったお客さんのお心遣いは、ネットショップをやっていてよかったと思うところです。
お客さんとよい関係を築いていれば、お店の再建においても元気のエネルギーをもらうことができるのではないでしょうか。
被災地を思いやる心
西日本で被害が拡大している真っ只中、民放ではバラエティや音楽番組を放送していました。ニュース番組でさえ、西日本の豪雨ではなく、別のニュースが優先されて報道されていることもありました。
沢山の方々が亡くなっている大災害なのに、どうなっているの?と思った人も多いと思います。
そんなとき、私のスマホにあるお店からメルマガが届きました。
そのお店は九州にあるので、被害状況や救援物資などを求めるメールかと思ったのですが、単なる新製品のセールでした。
今、それをやる必要あるの???
死亡・行方不明者が200人を超える大惨事のときに、セールのメルマガを送る神経が私には理解できませんでした。
ひょっとしたら、以前からその日にメルマガが送信されるように予約設定してあったのかもしれませんが、かなり残念なことでした。
ある地域で震災があっても、他の地域では普通に生活をして仕事もしています。でも、全国のお客さんに対応しているネットショップは、大きな震災が起こっている中では、心配りが必要になると思います。
メルマガのようにお店からお客さんに直接リーチするものは、被災地だけでなく、他の地域のお客さんでも受けたくない時期というものがあるでしょう。
命に関わるような事態で、家族や友人からの大切な連絡を待っているときに、独りよがりのメルマガが届いたときのお客さんの気持ちを考えてみてください。
どうしてもメルマガを送りたいのであれば、まず、震災のことに触れて、お見舞いと励ましのメッセージなどを伝えるべきだと思います。
復興に向けてお金の問題と相談窓口
復興において、お金の問題は大きな課題となるでしょう。
ネットショップの浮き沈みに備える投資でもお話しましたが、小さなネットショップの自営業者は、儲かったら収入が増えますが、儲からなければ収入がゼロという恐ろしい世界です。
何かあったときに備えて、半年から1年は仕事をしなくても何とかなるという貯蓄が欲しいと思います。貯蓄があればそちらを崩して対応できますが、そうでないときはお金を借りる必要があるでしょう。
怪しいところに手を出す前に、まずは、行政機関の相談窓口を利用されてみてはどうでしょうか。
経済産業省では、被災中小企業・小規模事業者対策を行っています。経済産業省ではなく、中小企業庁(経済産業省の外局)のホームページを参照していただけると各地域の特別相談窓口が分かりやすいです。
総務省では、り災証明書の発行窓口や各種支援措置(被災者生活再建支援金、災害援護資金の貸付など )を講じている関係機関の窓口を紹介しています。
厚生労働省では、大雨により被災した場合の労災関係手続き、災害時における雇用保険制度の特別措置、中小企業の未払賃金の立替払制度などを案内しています。
一般社団法人自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関では、自然震災の影響で、住宅ローンなど債務の返済が難しいときに、債務の減額や免除を受けるための要件や手続きの解説があります。
初期費用を抑えて再スタート
実店舗が被災したときは、店舗、看板、駐車場、客席や備品などに数千万円のコストがかかってくることがあります。
ネットショップは、倉庫や自宅の一室からでもスタートできます。そういった意味では、初期費用が抑えられる商売で、すべてではありませんが、一般の店舗に比べると再開がしやすいと言えることがあります。
しかし、被害が大きく、負債と今後の収支を考慮したとき、再建を諦め一時撤退の判断が必要になるかもしれません。お客さんから再開して欲しいと激励されたからと言って、気持ちだけで再開できない厳しさもあるでしょう。
ショップオーナーさんにとっては、自宅の修理や再建に加え、お店の再開という2つの大きな作業を進めていかなければならない厳しい状況になるかもしれません。
被災して在庫商品を失ってしまったあるお店で、卸先に相談したところ、信頼の置けるお店だからこれからも頑張って欲しいと言って、お店の再開に必要な在庫を提供してもらうことができたケースがあります。
困ったときは、行政機関をはじめ、金融機関、卸や提携先などに相談してみてください。すべてがうまくいくとは言えませんが、一人で頑張っても無理なことがありますから、ダメ元でもいいから誰かに話をしてみてください。そこから新たな道が開けるかもしれません。